あるあつーい夏の日。
うさぎちゃんとゴリラくんは、町へ買い物に来ていました。
「森の中と違って、人間が住む町はなんて暑いのかしら」
うさぎちゃんの言葉にゴリラくんも激しく頷きました
2匹が溶けそうになったその時、素敵なおうちが目に留まりました。真っ白な外観に、グリーンの屋根、それに大きな木の扉がついています。
「絵本の中から飛び出してきたような家だなぁ」
「わたし、ヨーロッパチックなおうち大好き! ゴリラくん、もっと近くで見てみようよ」
うさぎちゃんとゴリラくんが大きな木の扉に近づくと、そこには『ご自由にお入りください』と書かれた看板がありました。それを見たうさぎちゃんは大喜び。
「やった。ゴリラくん、入ろうよ入ろうよ」
「ぼく前に本で読んだことがあるよ。『どなたもどうかお入りください』って書いてあって、入ったら最後にはみーんな食べられちゃうんだ」
木の香りと肌触りをかくにんしていたうさぎちゃんは、両前足でパアッンと扉を開きました。
「わたしの勘がここは大丈夫と囁いているわ! ついて来て
おうちに入った途端、うさぎちゃんはその場でピョンと飛び跳ねました。
「中も素敵! ヒノキの香りがして気持ちがいいね」
ゴリラくんは驚いたように、吹き抜けになった天井を見上げました。
「思ってたよりも涼しい。まるで森の中にいるみたいだ。なんだか落ち着くね」
2匹で見て回っていると、ある部屋を覗いたうさぎちゃんが「あっ」と声を上げました。「誰か眠ってるよ」
ゴリラくんもうさぎちゃんと同じように覗きこみながら、「光の糸を束ねたようなきれいな髪だね」と呟くと、女の子がぱちりと目を覚ましました。
「あらあら、これはうさぎさんに、ゴリラさん。いらしてたのね」
女の子はその場でくるりと回って見せました。
「『ミチコのへや』へようこそ。わたしはジャスミン。ここに棲んでいる妖精よ」
後編につづく
(文:富士川 三希)