ジャスミンちゃんと森の動物たちvol.3 (文:富士川三希)
『トリック・オア・トリート』
「「トリック・オア・トリート!」」
ジャスミンちゃんがドアを開けたのと同時に、うさぎちゃんとねずみちゃんは声を揃えて両前足を差し出しました。
ジャスミンちゃんはその仕草にふふっと笑いました。
「かぼちゃ味のバウムクーヘンがあるわ。一緒にいかが?」
うさぎちゃんとねずみちゃんはフローリングの上をピョコッ、ピョンピョン。いっしょうけんめいに、おかしな歩き方をしてテーブルに着きました。
「あら、今のは何をしていたの?」
「床の木の節から節に跳べないとゲームオーバーになって、おばけに連れて行かれちゃうってゲームだよ」
うさぎちゃんが答えると、「あたし、初めてクリアできたぁ!」と、隣でねずみちゃんが目を輝かせています。
ジャスミンちゃんは微笑みながら、紅茶と切り分けたバウムクーヘンをテーブルの上に置きました。
「うちのフローリングは比較的、節が多いのよ。ヨーロピアンオークって言って、おうちが夏は涼しく冬は暖かくなるの」
うさぎちゃんとねずみちゃんは「そんなおうちに棲みたい」とまた声を揃えました。
「バウムクーヘンって、断面が木の年輪に似ているから『木のケーキ』って意味でしょう?」
ジャスミンちゃんの言葉に、うさぎちゃんはバウムクーヘンをじっと見つめてから、ぱくりとほおばりました。
「じゃあバウムクーヘンは、きれいに並んだ年輪だね」
ジャスミンちゃんはフローリングを見て目を細めました。
「そうね。逆に天然木はひとつひとつ個性があって、使っていると味も出て愛着も湧くから気に入っているわ」
「「ごちそうさまでした!」」
ドアを開けたうさぎちゃんは、「ジャスミンちゃん、また遊びに来るね!」と大きく前足を振ると、次のおうちに向けてねずみちゃんと駆けだしました。
Vol.4につづく