ミチコのへや

【Vol.1】あるあつーい夏の日 前編

あるあつーい夏の日。

うさぎちゃんとゴリラくんは、町へ買い物に来ていました。

「森の中と違って、人間が住む町はなんて暑いのかしら」

うさぎちゃんの言葉にゴリラくんも激しく頷きました

2匹が溶けそうになったその時、素敵なおうちが目に留まりました。真っ白な外観に、グリーンの屋根、それに大きな木の扉がついています。

「絵本の中から飛び出してきたような家だなぁ」

「わたし、ヨーロッパチックなおうち大好き! ゴリラくん、もっと近くで見てみようよ」

うさぎちゃんとゴリラくんが大きな木の扉に近づくと、そこには『ご自由にお入りください』と書かれた看板がありました。それを見たうさぎちゃんは大喜び。

「やった。ゴリラくん、入ろうよ入ろうよ」

「ぼく前に本で読んだことがあるよ。『どなたもどうかお入りください』って書いてあって、入ったら最後にはみーんな食べられちゃうんだ」

木の香りと肌触りをかくにんしていたうさぎちゃんは、両前足でパアッンと扉を開きました。

「わたしの勘がここは大丈夫と囁いているわ! ついて来て

おうちに入った途端、うさぎちゃんはその場でピョンと飛び跳ねました。

「中も素敵! ヒノキの香りがして気持ちがいいね」

 ゴリラくんは驚いたように、吹き抜けになった天井を見上げました。

「思ってたよりも涼しい。まるで森の中にいるみたいだ。なんだか落ち着くね」

2匹で見て回っていると、ある部屋を覗いたうさぎちゃんが「あっ」と声を上げました。「誰か眠ってるよ」

ゴリラくんもうさぎちゃんと同じように覗きこみながら、「光の糸を束ねたようなきれいな髪だね」と呟くと、女の子がぱちりと目を覚ましました。

「あらあら、これはうさぎさんに、ゴリラさん。いらしてたのね」

女の子はその場でくるりと回って見せました。

「『ミチコのへや』へようこそ。わたしはジャスミン。ここに棲んでいる妖精よ」

 

後編につづく

(文:富士川 三希)

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